鱚という魚は、素直で飾り気のない「生直(きす)」が語源だというが、ラクレリエールの「キスのクレープ」は夜を妖しくする色気に満ちている。
じゃがいものドレスをはらりと捲ると、鱚は麗しい白肌を晒す。
トリュフとバニラの妖艶香を振り撒きながら、「さぁ、食べて」と耳元に囁く。
堪らず口に運ぶと、澄んだ甘味がさらりと舌に流れ、ソースと溶け合う。
トリュフとバニラの淫靡な吐息が、鼻を抜けて脳の奥に眠る欲望を揺り起こす。
一口食べて香りが、二口食べて香りが膨らんで視界がだんだんと遠くなっていく。
旨さを超えた官能が身体全体を弛緩させる。
時が緩み、夜が伸びていく。
今晩は帰れそうにない。
◆アミューズ
◆桃のガスパチョ ブリアサヴァラン カルダモン
◆ズッキーニ ガリシア風タコの煮込み
◆キスのクレープ バニラとトリュフの香り
◆コンソメブイヤベース
◆海うなぎ マトロート
◆マナガツオ コリンキー シュークルート
◆毛蟹と雲丹のパイ 甲殻類のクリームソース
◆青みかん ラタトゥイユ 天然野草のジュレ
◆夏鹿ロースのロースト ポワヴラード
◆和梨
◆紫蘇
– 白金高輪 ラ・クレリエール –