新たな定番

 

有史以来の原種黒豚であるビゴール豚は、新芽や木の実を食べて健やかに育つ。肉質は、快哉を叫びたくなるしなやかな食感であり、旨味と芳香は、底なしに深い。

初めては食べたのは、代官山の「ARMONICO」。

脳裏にこびりつく衝撃は、今も鮮明に覚えている。

そして、2度目は「コートドール」である。

待ち侘びたそれは、豚とは思えぬロゼ色の肌を見せ、「食べて」と誘ってくる。

歯が肉を噛み砕く度に、鼻腔がしな垂れるような甘い香りがあって、肉汁は牛の様に凛々しい。

目を瞑れば、豚とは思えない底知れぬ深み。

それは、最初に感動した「ARMONICO」以上の甘美だった。

「ビゴール豚は、シェフもお気に入りで新たな定番として出していくつもりです。」

そう給仕の方が語る。

その言葉を聞いて、この優美が定番として味わえる事に心から感激の念が押し寄せ、目頭が熱くなった。

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