これが猪か。
儚く消えていく脂と勇猛な肉質の対比は、牛や豚、鳥には無い猪の独特。
どこまでもピュアで淀みなく、それでいて猛々しい。
脂がぐんと乗って舌に迫るが、筋肉を感じさせる身の張り方があって命が迫ってくる。
噛むほどに耐えることなき旨味に溢れ、沈んでいく興奮がある。
これが猪なのか。
極め付けは、ジュと蕗のとう味噌を溶かしたソースと、ギリギリまで火で痛みつけられた芽キャベツ、筍、牛蒡、蓮根、玉ねぎ、そしてくたくたに煮込まれた縮緬キャベツである。
口を目一杯広げ、フォークとナイフを駆使して、全てを同時に口に運ぶ。
血と味噌が混ざり合った深味、土の滋養を讃える野菜共の滋味や甘味の全てが、猪と調和し、美味の極地へと私を誘う。
あぁなんて素晴らしい一皿であろうか。
そのままテーブルに突っ伏してしまった。
山根シェフ、そしてこの猪を仕留めてくれた島根のハンターさん本当にありがとう。