いくら腹が満たされていようと、北島亭のステーキを食べないという選択肢はない。 エシャロットバターの香りに誘われ、噛めば、ランプ肉の濃い滋味がどっと繊維から溢れてくる。 透き通った脂にしつこさは無く、むしろ清々しい。 …
月: 2024年3月
この真鯛のポワレを食べれば、改めてフランス料理が足し算の料理であることが実感できる。 白身魚に敢えて赤ワインを合わせ、ベーコンやソテーした玉ねぎとマッシュルーム、菜花のクリーム煮そしてポーチドエッグを重ねた一皿だ。 …
出てきた瞬間、圧倒的なボリュームに笑いが込み上げた。 温菜「蛤・帆立・芝海老・リードヴォーのクリーム仕立て 軽いパイを添えて」である。 「軽いパイ」は確かに質量的には軽いが、上に一つ下にも一つ在って、視覚的に満腹中枢 …
私的北島亭のスペシャリテである「タラバガニのクレミューズ ブリニ添え」。 マヨネーズ風ソースで和えたタラバガニのほぐし身を、ブリニに乗せて食べる一皿だ。 ブリニとは小麦粉や蕎麦粉、卵、牛乳で作るロシア発祥の甘くな …
ギリギリまで焼きこまれた香ばしい軽やかなフィユタージュ。 歯茎や舌に絡みついて取れない濃厚で重厚なカスタード。 この対比がミルフィーユである。 前者は香ばしく軽ければ軽いほど望ましく、後者は濃く重ければ重いほど望まし …
なんて、パフォーマンスの悪い料理であろうか。 フードプロセッサーにかけ、2~3日かけてゆっくりと濾すことでトマトの水分のみを抽出したゼリーである。 グラス一杯で最低5つはトマトが必要。 なんて、パフォーマンスの悪い料 …
マダムが言うままに、皿の上で頬肉を崩してから口に運んだ。 あぁ、何たることか。 フォンとマデラ酒が境目なく溶け合った太い旨味に、繊維から滲み出る頬肉の滋味が浸透し、身体がゆっくりと沈んでいく。 食べ進める毎に皿の深度 …
五十嵐シェフの魚料理が大好きだ。 的確な施しによって、食材の素質が目覚めているからだ。 平目は、ふっくらと優しいが、ぐっと舌に迫ってくる味わいに勢いがある。 帆立は、歯切れがよく、繊維から溢れる甘味に密度があって濃い。 …
五十嵐シェフのスペシャリテの一つ「鰻のファルシー」。 バターで炒めたワイルドライスを詰め、外はカリッと中はゼラチン質の粘着質を残した鰻に、上にポルト酒を、下にカレーソースを敷いた一皿だ。 カリッと爆ぜる外皮と歯茎に絡 …
冬の名残が残る早春を感じた。 菜の花や蕨が呼び込む春の息吹に、トマトと筍が涼しく爆ぜるが、何より甘エビのねっとりとした甘味が、全体を包んで深く味わせる。 朝晩は冷え込むが、日中の日差しに春を感じさせる3月。 出会いも …