魚料理はパイ包み焼きと聞いてガッツポーズした。
そして、目前に供された瞬間、両拳を突き上げた。
「甘鯛のパイ包み焼き」である。
バターで照りに照ったパイ生地の輝きは、サングラスが必要な程に眩しい。
ナイフを入れれば、甘やかなバターと甘鯛の香りが鼻を抜け、筋肉が弛緩する。
ヒラリヒラリとパイが舞う中で、広がる甘鯛の柔らかな甘味が無尽蔵に膨らんでいき、クリームの中に忍ばせた鰻のジュが旨味のポケットを生んで、私を深淵へと引き摺り込んでいく。
思い出すだけで涎が出る、我が人生で一番のパイ包み焼きであった。