五十嵐シェフの魚料理が大好きだ。
的確な施しによって、食材の素質が目覚めているからだ。
平目は、ふっくらと優しいが、ぐっと舌に迫ってくる味わいに勢いがある。
帆立は、歯切れがよく、繊維から溢れる甘味に密度があって濃い。
鮑は、肉体に張りがあって、噛む喜びに満ちている。
アイオリソースは、ニンニクが出しゃばっておらず、柔らかに留まって三者に寄り添う。
別添えのスープを飲めば、凝縮した魚介の旨味が細胞一つ一つに染みわたっていく。
最後にスープと混ぜて口に運べば、あぁ、押し寄せる波に流されてしまうのであった。