コロッケにナイフを入れる瞬間、いつもドキドキする。
中の具材は何だろうか、想像してワクワクする。
フランス料理ないし高級店では、供されると同時に説明が入るので中身は分かってしまうのだが、具材の大きさや密度はナイフを入れないと分からない。
ザクッ。
快音が響けば、海老と鮑が勢いよく飛び出てきた。
コロコロではなくゴロゴロ、皿の上で地響きが鳴り響く。
想像よりも大きくて、思わず喉もグッと鳴る。
たまらず齧り付くと、旨味の爆風に吹き飛ばされた。
痛快な歯応えで海老は弾け、ほんのりと甘いエキスを流す。
鮑に歯が食い込めば、波間の潮騒が口の中に濃縮され、雲丹は熱されて空気を含んでいるかのように、ふわりと溶けていく。
その瞬間に流れる空気には、甘い香気があって、官能がくすぐられる。
魚介たちの逞しさやしぶとさが一つとなった、めくるめく味わいが口の中で爆ぜる。
タルタルもまた、楽しみの一つだ。
濃密か、はたまたあっさりか、酸味強めか否か。
このタルタルは、酸味弱めの優しいやつ。
濃密な雲丹に共鳴し、控えめな酸味が油の香ばしさを品よく引き立てる。
具材が上等なのだから、これぐらいがベスト。
やっぱり、コロッケは楽しい。
コロッケは、エンターテインメントだ。