月: 2024年4月

波の音

  ちゅる。 牡蠣が口に滑り込んできた。 その瞬間、波の音に鼓膜が震え、母なる海に舌が抱かれた。 乳の濃密な甘みが滲み出し、ビネガーと混じり合い、旨味を膨らます。 フランボワーズが、牡蠣と爽やかに融合し、心地良い磯風が吹 …

神様

  成熟する前のしなやかな筋肉が、歯によりかかる。 胸が疼くいたいけな滋味がこぼれ落ちる。 穏やかな芽キャベツが、幼い旨味に歩調を合わせ、春を囁く。 最後に、とっておきの脂身を噛む。 この部位には、神が宿っている。 仔羊 …

かすべ

  はらり。 温かな空気をはらんで、かすべの身が舞う。 かすかな甘みが、繊維に沿って顔を出し、笑顔を生む。 一方で、軟骨は歯の間をコリコリと弾み、歯を喜ばせる。 ソースの太い酸味が、かすべの繊細を愛おしむかのように、そっ …