4月の北島亭。 アスパラか、フォアグラか。 無論、アスパラである。 ただ茹でただけなのに、穂先からは春が香り、根本から大地のミネラルが溢れ出す。 コリアンダーを忍ばせたオランデーズソースは濃厚だが、決してアスパラを越 …
月: 2024年4月
ちゅる。 牡蠣が口に滑り込んできた。 その瞬間、波の音に鼓膜が震え、母なる海に舌が抱かれた。 乳の濃密な甘みが滲み出し、ビネガーと混じり合い、旨味を膨らます。 フランボワーズが、牡蠣と爽やかに融合し、心地良い磯風が吹 …
成熟する前のしなやかな筋肉が、歯によりかかる。 胸が疼くいたいけな滋味がこぼれ落ちる。 穏やかな芽キャベツが、幼い旨味に歩調を合わせ、春を囁く。 最後に、とっておきの脂身を噛む。 この部位には、神が宿っている。 仔羊 …
はらり。 温かな空気をはらんで、かすべの身が舞う。 かすかな甘みが、繊維に沿って顔を出し、笑顔を生む。 一方で、軟骨は歯の間をコリコリと弾み、歯を喜ばせる。 ソースの太い酸味が、かすべの繊細を愛おしむかのように、そっ …
ナイフは使わず、一口で食べた。 ラビオリの皮が、幻の様に消えていく。 とろみのあるバターで照ったラビオリに、舌や歯が艶やかに撫でられる。 海老は弾け、豚はごろっと舌の上を転がっていく。 海老と豚、それぞれの持ち味の対 …
パンナコッタなのに噛み締めていた。 なめらかだが、濃縮した乳の香りや甘みが奥底からググッとせせり出し、舌や歯茎に絡みついて離さない。 コニャックに陶酔した牛が、舌の上を身悶え、だらしない甘みが広がっていく。
自由奔放な子兎が、舌の上を駆け巡った。 背肉に歯が食い込むと、しなやかな筋肉の味が広がり、内臓には滾るような血の味があって、奥底から深い滋味が顔を出す。 大人になろうとする勢いと未熟ゆえの危うさがあって、なにかいけな …
実にマスキュリンなホタテである。 貝柱を噛むと、歯が吸い込まれていく快感があり、色っぽい海のエキスが顔を出す。 ひもはシコッと歯の間で弾み、卵巣には貝柱とは違った艶やかな甘みがある。 穏やかに見えるホタテだが、内面の …
パイ包みがメニューにあると、分かりやすくテンションが上がる。 これは、朝霧高原豚のパイ包みである。 サクッとナイフを落とせば、豚の滋味が湯気となって昇り、肉汁がソースへ流れる。 富士山麓でのびのびと育てられる朝霧高原 …
クレープ生地から香るバターに吹かれ、しらすがひらりひらりと口を舞うと、桜吹雪の風情漂う。 クリームに埋もれることなく、ラクレットチーズの塩気にも負けていない。 しらすが、しらすであることを誇った甘みが、次第に舌の上に …