お一人様の特権

 

ソースの漆黒に映し出された、照明の満月を目にして、獣人と化した。

身の毛が逆立ち、奥底に眠っていた野性が目覚め、理性を失った。

尻尾のコラーゲンや滋味、太い酸味、ワインとフォンが交じり合った気高い旨味。

思わず、ナイフとフォークを手放す。

圧倒的な味の輝きに、我を忘れ、素手で屠る、屠る、屠る。

肉を引き裂き、骨をしゃぶり、最後の一滴まで余すことなく、ひたすらにがむしゃらに屠る、屠る、屠る。

こんな姿は、人には見せられない。

お一人様だけの特権である。

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