心から喜びの念が込み上げた。
なめらかで丸い人参のムースと動物達の高貴な気配を感じるコンソメジュレと濃厚で味わい深い雲丹が、一寸の狂いなく、この一点しかないという頂を極めて調和を果たしている。
一切の澱みがなく、清らかで澄みきっており、喉に落ちても、旨味の余韻が地平線の様にどこまでも続いていく。
この逸品は、ある種の到達点である。
何かを加えたり、引いたりする余地が無い。
林シェフも、それを分かっているのだろう。
だから、自分の色は出さず、多大なる敬意と感謝を表し、師匠の味を忠実に再現した。
継ぎ手がいなければ、どんな名作もいつかは途絶えてしまう。
マノアールダスティンのスペシャリテ“人参のムースとコンソメジュレ 雲丹添え”がこうして継承されていることが、何よりも嬉しかった。