味には、情が宿る。

 

ハンバーグ定食1400円

大井町は丸八とんかつ支店。47年続く老舗のとんかつ店。年季の入った店外にたなびく純白の暖簾をくぐると、恰幅のよいご主人と小柄で可愛いらしいお母さんが温かく迎えてくれる。
開店以来使い続けているピカピカに磨かれた木のカウンターから、美味いものを食べさせてくれる予感が感じられ、腹の虫がざわつき始める。

「ハンバーグ定食ください。」
ほどなくしてやってきたハンバーグ定食。

平たくでっかいハンバーグの上にカリカリの目玉焼き、山盛りのご飯とキャベツ、なみなみとつがれた豚汁。お新香もたっぷり。

ハンバーグは肉汁ドバァ!と対極を征く昔ながらの味わい。肉は滑らかに解けていき、優しい甘味がじんわりと舌を包み込む。
「うまいっ!!!」ではなく、「うまぁ〜」。
ほっとする味に、頬の筋肉が弛む。
ほの甘いソースも堪らない。
丸い甘味と酸味が、挽肉の甘さと抱き合ってご飯が猛烈に欲しくなる。
受け止めるご飯の炊き加減も良い。
柔らかく、角がない。ハンバーグをそっと受け止めてくれる優しさがある。
豚汁を啜る。
根菜の香りと豚肉の甘みが溶け込んでいて、これまた、じんわりと沁みる味。
ご飯が少なくなると、お母さんが
「お代わりする?」
と笑顔で聞いてくれる。
その優しさに応えたくなって、ついついお代わりをしてしまう。
すっかり腹は満ちて心も満ちる。
「ごちそうさまでした。」
膨れたお腹を摩りながら、暖簾をくぐる。

ご夫婦の人情は味として、温度として、料理に宿り、私の胃袋と心を抱きしめる様に温めてくれる。

 

  

– 大井町 とんかつ丸八支店 –

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