感謝を込めて。

 

創業1968年高級ブティックが立ち並ぶ銀座で古き昭和の匂いが濃く残るエアポケットの様な処。平日の昼間はサラリーマンの飯処、休日は昼間から魚をつまみに酒呑み達で賑わいを見せている。

なびく青ののれんをくぐると「お食事ですか?「呑みですか?」と尋ねられる。下戸の自分は食事一択。丹念に手入れの届いた木のカウンターに腰を下ろす。壁一面のお品書きから悩みに悩んで、ぶりの照り焼きを。雨の降る肌寒い日だったので温かいもの、なんて言い訳をして名物の「とり豆腐」も追加する。

名物「とり豆腐」は鶏もも、豆腐、春菊を煮込んだ水炊きの様な料理。鶏の滋味が滲み出た出汁が冷えた体をじんわりと火照らしてくれる。「あぁ」と感嘆の声が思わず漏れる。

一息ついたら「ぶりの照り焼き」に箸を伸ばす。筋肉質で分厚いぶりはまだ春だというのにこんがり日焼けしている。香ばしい醤油の香りと甘辛い味付けでご飯が猛烈に進んでいく。ついつい口いっぱいにご飯を詰め込んでしまい、味噌汁に助けを求める。この日の味噌汁はなめこと豆腐の赤だし。「豆腐がダブったなぁ」欲張ったツケが回ってきて苦笑い。

ものの数分で完食。顔を上げると、店前には酒呑み達がまだかまだかとうずいている。お食事の私は、平らげたらすぐに席を立つのが礼儀だ。

「ありがとうございました〜!」活気あるお姉さんが送り出す。

派手さは無いが、日本の古き良き食事文化を銀座の地で今も大切に残し続けてくれていることに感謝を込めた「ご馳走様」。

青ののれんがまたなびく。「お気をつけて」と言っているみたいだ。

– 銀座 大衆割烹三州屋銀座店 ぶりの照り焼き定食・とり豆腐 –

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