舌を巻いた。

 

正直なところ、「味」には期待していなかった。

明治37年創業。文化遺産の様な風情ある空間で食事をする「体験」を味わうのが目的だったのだが・・

 

オムレツは箸を入れると、半熟卵がとろんと溢れ出た。ふわっ、とろっが共存しながらほのかに香るバターに下支えされた卵の甘味が頬の内側いっぱいに広がっていく。官能的な舌触りと丸い味わいに体が弛緩し、舌が堕落した。

 

メインのポークソテーはしっとりと艶やかで色気がある。水分が逃げないよう絶妙な火加減でソテーされた豚はしなやかできめ細かく、脂のジュースが甘い香りを放ちながら溢れ出て永遠に噛んでいたくなる旨さがある。

ご飯に乗せて掻き込めば、米の甘味と溶け合って豚の旨味は一層膨らみ、幸福を運んでくる。

 

時間が巻き戻った様な空間で出逢った2皿に思わず舌を巻いた。

 

– 人形町 来福亭 オムレツ・ポークソテーライス –

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