北島亭のタルトは不可思議である。
メインの肉を終え、胃袋が悲鳴を上げる寸前でもスルスルと収まってしまう軽さがある。
生地はみっしり詰まり、深くギラめく苺は山盛り。ポーションはパティスリーのそれ以上である。
だが、一口食べるや否や、胃袋は自らの容量を忘れ、タルトを収めることに夢中になる。
そして
「あれ、ここにあったタルトはどこに行ったの?」
気づけば皿の上はすっからかんだ。
ほっと一息。
エスプレッソで蓋をする。
すると胃袋は我に返り、
「あぁ、食べてたんだ。」
ググッと満腹感が込み上げてくる。