春のリゾット

「ありがとう」

自然と声が漏れた。

「春野菜のリゾット」である。

ゆっくりと流れる米の甘みに、蛍烏賊がねっとりと絡み、野菜がサクサクとリズムを鳴らす。

米の慈愛に心が和み、蛍烏賊の呼吸に胸が焦らされ、春野菜の声に身体が洗われる。

一皿の中にドラマが在って、扇情が煽られる。

山と海が手を取り合った春の豊潤に、感謝の念が目覚めていった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です