ピッツァ・ガストロノミー

 

マンダリンオリエンタルホテル東京38Fにある「THE PIZZA BAR ON 38TH」。

「50 Top Pizza Asia Pacific 2023」にて1位、「50 Top Pizza World 2023」にて4位を受賞した、北海道から沖縄まで季節に応じて芽吹く日本全国の食材を使ったコーススタイルのピッツェリアだ。

当店を率いるのは、マンダリンオリエンタルホテル東京エグゼクティブシェフのダニエレ・カーソン氏。

彼の作るピッツァは、アラ・パーラというローマ風のピッツァ。

ナポレターナやロマーナと比べて、水分が多くて発酵時間が長く、イーストも極僅かしか使わない。

当店では、加水率80%かつ48時間の長時間発酵をさせることにより、極限まで軽やかな口当たりと食後感を追求している。

歯が当たれば、サクッとした快音が鳴ると共に香ばしい火花が散り、しっとりと歯に絡みつきながら粉の豊かな風味が広がって甘やかに溶けていく。

焼き方もナポレターナやロマーナとは全く違う。

生地の下には紙を敷き、ガスと電気のハイブリット型の釜で長い時間ゆっくりと熱を入れる。

生地内の繊細な気泡や伸ばした際の流れを壊さない様に紙を挟むことで、具材のエキスや油分が生地へと浸透し、旨味が溢れるピッツァへと仕上がる。

そして、ユニークなのが、ベースの生地を2種類、具材によって使い分けていることだ。

鮮やかなトマトソースには軽やかな生地を、香り高いチーズには味わい深い全粒粉ブレンドの生地をそれぞれ使っている。

この拘りの原点にあるのが、日本での食体験。

寿司屋では、ネタによってシャリを使い分けたり、酢の配合を変える。

その拘りに感銘を受けた彼は、生地がシャリなら具材はネタと、新たな視点からピッツァを捉え、10年の月日を経て今のスタイルに辿り着いた。

そう、「THE PIZZA BAR ON 38TH」は、日本だから生まれた、日本でしか味わえないピッツェリアなのである。

この日のピッツァメニューは、下記の8枚。

マリナーラ

ブッファラ

ピッツィーノ

山菜

新タマネギの様々な形モリーユ茸添え

モルタデッラとストラッチャテッラ

6フォルマッジ

スパイスチョコ入り和オレンジ

クラシックなマリナーラやブッファラは勿論、当店の醍醐味である季節の食材を使った「山菜」と「新タマネギの様々な形モリーユ茸添え」は、白眉の1枚。

 

 

10種の山菜をふんだんに用いる「山菜」は、山菜ならではの青味や苦味など、自然が生んだ複雑な風味がストラッチャテッラの乳脂と出会うことで、清廉と深味が共存した春の萌芽が口の中で一斉に芽吹く。

目を瞑れば、そこは荘厳な深山の只中である。

 

 

新タマネギに焦点を置いた「新タマネギの様々な形モリーユ茸添え」は、様々な調理法によって新タマネギの多彩な表情が引き出されている。

痛快な食感になめらかな舌触り、酸味と甘味と辛味等バリエーション豊富な味わい。

それらに寄り添い、噛むほどに旨味を広げる香ばしいパンツェッタ。

新タマネギとはかくも魅力的な野菜なのかと、喜びと驚きに満ちた革新的な1枚だ。

「THE PIZZA BAR ON 38TH」でしか味わないピッツァ・ガストロノミー。

席数はたったの8席なので、現在の予約は最低でも2ヶ月待ち。

争奪戦は避けられないプラチナシートとなっているが、搭乗が叶えば、まだ知らない素敵な美食の旅へと貴方を連れて行ってくれるだろう。

 

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