「ベントエマーレ」のピッツァを食べていると、穏やかな気持ちになる。
長時間低温発酵させた生地は、口当たりが軽く、歯が沈み込んでいくように入っていく。それは、上質なクッションに保たれた時の感覚に近く、ふわふわとした食感で、心が安らぐ。
塩は控えめで、小麦の風味が豊か。噛むほどに唾液とまぐわい、甘みがふくらんで舌が落ちる。
焦げの塩梅も絶妙である。香ばしさが程良く漂い、普段はコルニツォーネ残す方でも、当店のは「美味しい、美味しい」と喜んで食べるに違いない。
マルゲリータは、東京でも3本の指に入るであろう素晴らしい完成度である。
トマトソースは、瑞々しく、味わいに深みがある。クリーミーなモッツァレラと出会うと、トマトの旨味と酸味が、濃密な甘味へと姿を変え、別の旨味がやってきてドギマギさせられる。
バジルもフレッシュで、喉に落ちる瞬間に、ふっと爽やかな風を吹かせて心地良い余韻を残してくれる。
クアトロフォルマッジも見事である。
4種のチーズが、互いを尊重し、まとまろうとする知覚があり、一本の太い旨味へと収斂している。
別添えの蜂蜜をかければ、乳脂のコクの奥にある甘みと融合し、濃厚なチーズケーキに似た味わいになる。
あぁ、書いていたら、また食べたくなってきた。
– 不動前 ベントエマーレ –