瞳を閉じれば。

 

じゅわっ。箸を入れると玉子から澄んだ出汁が器いっぱいに溢れ出た。

静かに口に運ぶと、玉子の布団は舌を優しく包み込み、暖かな陽だまりとなった。

玉子の純然とした滋味と繊細で奥行きのある出汁の風味が溶け合って、上品ながらご飯を呼ぶ味わいとなる。

おひつで供されるお米は艶やかで甘く、玉子の滋味を膨らまして穏やかな陽気で胃袋が温まった。

箸を置いて瞳を閉じると、まぶたの裏に祇園の景色が浮かんだ。

– 赤坂見附 やげんぼり 八坂 –

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