ぽん多の穴子。

 

この日の「ぽん多本家」はカウンター席の真ん中をいただいた。4代目が調理されるお姿を間近で見られる特等席。静かな店内に響くのは、キャベツを切る音、揚げあがる直前の油の爆ぜる音、揚がったカツレツに包丁が入る音。静けさの中にある確かな臨場感に胸が震えて腹が鳴る。

 

まずはヤサイサラダ。

塩、故障、お酢と油を絡めたレタスを土台に、きゅうり、トマト、アスパラガス。そして自家製のマヨネーズをたっぷり。

照明を浴びて煌めく新鮮で色鮮やかな野菜たちの姿の凛々しきこと。生き生きとした繊維に歯が喜び、爆ぜ出るひんやりとした水分で口が潤い、切れ味の良いドレッシングで際立った甘味に舌が喜ぶ。前妻として食べるには勿体無いほどの美味しさにうっとりします。

 

メインは穴子フライ。

大ぶりな穴子まるまる二尾が黄金の衣を纏ってお皿を飾る。その堂々たる御姿に圧倒されるが、鼻をくすぐるラードの香に誘われて箸を伸ばす。そう、私はカブトムシ(?)

歯を入れると、衣はサクッと快音を響かす。ラードの甘味を散らかして、穴子はしたたかに抵抗しながら歯切れていく。ねっとりとした舌あたりで歯茎にまとわりついて、旨味をぐんぐんと膨らませる。

ラードと穴子が一つになっていき、舌がとろける様な旨味が口を満たして、喉へと落ちていく。塩をまぶして、レモンをきゅっと絞ると、穴子の甘味の輪郭がくっきり。熱々のご飯で受け止めると、米に穴子の精が移って恍惚となる美味しさ。

キリッとした漬物で口の調子を整えながら、衣のかけらまでお腹に収めてご馳走様。

次は「イカフライだなぁ」。膨れたお腹をさすりながら店を出た。毎度見事な「ぽん多本家」のご馳走に昼のお腹が喜んだ。

 

– 上野広小路 ぽん多本家 ヤサイサラダ・穴子フライ –

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