ネギに身を潜めた蛤と目があった時、頬を赤らめた。 白濁とした汁を滴らせた姿、陽の光を初めて浴びたかの様な透き通った肌に、色気を感じたからだ。 穢れなど一切見られないその純粋無垢を前に、鼻息を荒くした自分を恥じらいつつ、ゆ …
厳しい自然環境を生き抜いた野生の鳥は、人間に迎合することなど考えていない。 噛むと感じる青葉の様な香りと苦味は、肝や内臓とは違う、森の苦味。口腔にしぶとくいすわり、迫ってくるそれは、舌に甘えない孤高である。 だが、栗やジ …
ポシェした牡蠣は、生よりも妖艶である。 加熱によって生まれた、繊細な身の張りを歯で感じる。 プチっ。 弾けた身から滋養溢れるエキスが流れ出る。 その瞬間の優美が、生では味わえない色気が、官能に触れてくる。 五十嵐シェ …
鮎をフランス料理に仕立てながら、和を感じさせない。 鮎は、ガトーへと姿を変えて、優美な輝きを見せる。 口に運べば、鮎の滋味、苦味、旨味が次々と襲いかかってきて、呆然となってしまう。 エレガントでいて、力強い。 頬を優 …
背の高いグラスと共に、それはやってきた。 「人参のムース コンソメジュレと雲丹添え」である。 大地の滋養をたたえる人参のムースは、穏やかに甘く、舌を優しく抱き込んでくる。 琥珀色が眩いコンソメのジュレは深みのある旨味 …