マダムが言うままに、皿の上で頬肉を崩してから口に運んだ。 あぁ、何たることか。 フォンとマデラ酒が境目なく溶け合った太い旨味に、繊維から滲み出る頬肉の滋味が浸透し、身体がゆっくりと沈んでいく。 食べ進める毎に皿の深度 …
五十嵐シェフの魚料理が大好きだ。 的確な施しによって、食材の素質が目覚めているからだ。 平目は、ふっくらと優しいが、ぐっと舌に迫ってくる味わいに勢いがある。 帆立は、歯切れがよく、繊維から溢れる甘味に密度があって濃い。 …
五十嵐シェフのスペシャリテの一つ「鰻のファルシー」。 バターで炒めたワイルドライスを詰め、外はカリッと中はゼラチン質の粘着質を残した鰻に、上にポルト酒を、下にカレーソースを敷いた一皿だ。 カリッと爆ぜる外皮と歯茎に絡 …
冬の名残が残る早春を感じた。 菜の花や蕨が呼び込む春の息吹に、トマトと筍が涼しく爆ぜるが、何より甘エビのねっとりとした甘味が、全体を包んで深く味わせる。 朝晩は冷え込むが、日中の日差しに春を感じさせる3月。 出会いも …
最近は野菜達に魅了されることが多くなった。 腸の調子を整えるためにビーツと人参のコールドプレスジュースを常飲しているが、効果は勿論美味しいのが嬉しく、毎朝の楽しみの一つになっている。 お気に入りのピッツェリアのサラダ …
『ポーションは小さく、感動は大きく』という格言があるが、食いしん坊は、ポーションも感動も大きいと尚嬉しい。 それが好物なら尚更である。 高橋マダムが『日本一』と豪語する五十嵐シェフのヌガーグラッセは、私にとっても『日本一 …
五十嵐シェフは、イタリアンも出来ちゃうのか。 青首鴨が煮込まれても隆隆としている。 血潮香る鉄分を誇り、強勢としている。 これを受け止めるには、太く逞しいタリアテッレが相応しい。 コースの終盤だというのに、強者と強者のイ …
嫌だ。終わらないで。食べ終えたくない。 フォークとナイフを手放し、天に向かって、そう乞うてしまった。 リードヴォーとマルチョウである。 危うい幼さと拙さが残るリードヴォー 踏んできた場数が目の詰まった旨味へと昇華した …
魚料理はパイ包み焼きと聞いてガッツポーズした。 そして、目前に供された瞬間、両拳を突き上げた。 「甘鯛のパイ包み焼き」である。 バターで照りに照ったパイ生地の輝きは、サングラスが必要な程に眩しい。 ナイフを入れれ …
ヤリイカに抱かれてしまった。 程よく加熱された痛快な食感と歯茎に絡みつく甘味が、粘着質なワカメとふくよかなホタテによってしぶとさを増し、剥がそうとしても剥がれない。 そして、ラクレットチーズが溶けたトマトソースはうま …