この瞬間を噛み締める。

 

定期的に訪問しているお気に入りの「新川 津々井」。赤坂の本店とは打って変わって、気取らず落ち着ける雰囲気が居心地良く、何を食べても間違えない素晴らしき名店。出会えてよかったと心底感じる。

この日はビーフカツレツ。ハンバーグと双璧を成す大好きな洋食メニューの一つです。

予約してからウキウキワクワク。焦がれるほどにご飯はどんどん美味しくなっていく。

ビーフカツレツがやってくる。

香ばしく揚がった衣の香りに、鼻の穴が大きくなる。

サクッとナイフで一刀両断。一切れコロッと横に倒すと、茜色に艶めく牛がお目見え。麗しき品格にうっとり。しばし愛でてからいただきます。

衣がサクッと快音を奏で、ヒレの鉄分が溢れ出る。血湧き立つ濃い香り、逞しい牛の精力が味わいとなって迫ってくる。噛むごとに鼓動がぐんぐん早くなる。体に力が漲ってくる。

デミグラスソースをたっぷり絡めてもう一口。

ヒレの鉄分に、熟れた旨味、コクと後を引く苦味が溶け合っていく。

あぁ、いつまでも噛んでいたい。

でも美味しい食事はあっという間。あぁ無常。いと悲し。

衣のかけらまで丹念に拾いながら、続かない幸せを噛み締めた。

– 茅場町 新川 津々井 ビーフカツレツ –

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