流石です、東洋軒。

 

黒装束に身を包んだ男性に出迎えられ、間接照明灯る薄暗い店内へ。秘密結社の本部に来たかのような感覚にゾクゾクします。

緊張感はあるけれど、お店の方は笑顔で丁寧。淀みない動きでそつなく対応してくださる。

お目当ては『松阪牛100%ハンバーグ』。

 

前菜は『コンビネーションサラダ』を選択。

緑野菜たちを囲むようなトマトにゆで卵、ポテトサラダ。ブーケのような野菜たちの盛り合わせは店内の薄暗さもあって、とても華やか。

どれも生きているのように新鮮。歯が繊維を断ち切る快音が鼓膜に響く。トマトは潰すとピューと汁を吐き出し、ドレッシングになる甘味が口を潤す。

ゆで卵は自家製のマヨネーズと共に。黄身が濃くて白身はハリが良い。ねっとりと舌に絡み、白身が崩れて口に転がる。逞しい命の力が伝わってくる。自家製のマヨネーズの旨味も凄い。油を感じない卵のコクが後を引く濃厚な味わいは、私上No. 1のマヨネーズ。

ポテトサラダは、インカのめざめを限界まで蒸して作るそう。しっとりしたムースの滑らかな口当たりながら、じゃがいもの旨味がぐんぐんと迫って来る。

量は多く無いのに、その凝縮した旨味に何倍も食べたかの様な錯覚を覚える。

たかがサラダされどサラダ。「美味しいお店はサラダも美味しい説」は揺るぎません。

メインの「松阪牛100%ハンバーグ」。

ランプやスジなど今日の具合から赤身と脂のバランスを絶妙な加減でまとめあげる。

ふっくらと松阪牛の風味だけで膨らんだハンバーグは、はちきれんばかりに表面から肉の汁がポタポタと流れて落ちている。混ぜ物なしの真の肉汁。圧倒的な覇気を感じる佇まいに、思わず背中が仰反りました。

 

ナイフを落とすと抱え込んだ肉汁が爆ぜ出し、お皿の上に水溜りが出来る。

一口噛んだ途端、体中の血が沸いた。松阪牛の猛々しい精力に体が反応したのだ。

牛の滋味、脂の甘味がじっとりと流れ、広がっていく。

コクがあるのに拗さはなく、さらりと流れて喉へと落ちていき、最後に香りがぶわっと弾ける。

そこには肉塊では味わえない様々な部位を混ぜ込んで到達する旨味と香りがある。そういう意味ではステーキよりも贅沢。

口に残る旨味と香りに大至急ご飯。

 

注文が入ってから都度、釜で炊き上げるご飯は、真の美味しい部分だけを茶碗に盛る。

硬めの炊きではないのに、一粒一粒の輪郭がはっきりと伝わってきて「米が立っている」とはこういうことだと教えられる。

噛む度に膨らんでいく、ふくよかな甘味と香りはハンバーグに負けず劣らず。

逞しいこのハンバーグを受け止めるのにこれ以外相応しいライスはないでしょう。

デミグラスソースは別添えでいただいたけど、つけずに全て平らげてしまった。

純粋なままを味わっていたい。

松阪牛の圧倒的な力強さに完膚なきまでにねじ伏せられてしまい、ひと口ごとに身震いした。

 

締めには「プリンアラモード」。

生クリームが苦手な旨を伝えたら、代わりにシャーベットを追加していただけた。流石のサービスに感服です。

プリンは昔ながらの硬めでプルプル。苦めのカラメルにコクのある卵の甘味とバニラの芳しい香り。

理想的なプリンに出会うと頬が緩む。

大満足のディナーでした。

 

– 赤坂見附 東洋軒 コンビネーションサラダ・松阪牛100%ハンバーグ・プリンアラモード –

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