GW最終日、「ぽん多本家」でお昼をいただく。
今日も入り口目前のカウンターで。
揚油からゆらめく美味しい陽炎を見つめながら、背筋を伸ばして料理を待つ。
瑞々しくて状態見事なヤサイサラダ。
アスパラガスが何より美味しくて、逞しい繊維から爆ぜ出る甘い水分に乾いた口が潤う。
次は必ずと決めていたイカフライ。
いつも変わらず衣が立っていて、香るラードが食欲そそる。サクッと軽い食感もいつも通り。歯を入れると、パラパラと散らかってラードの香気が口を満たす。
むっちりとしたイカの身は衣の中で蒸されてぷっくりと膨らんでいる。その左証に奥歯を押し返すような力強い弾力がある。その弾力は衣に蒸されて生まれるもの。生では味わえない、フライならではの逞しいハリ。
歯を沈めると身が弾け、甘味がじわじわっと迫ってくる。咀嚼する毎に、奥歯や歯茎にまとわりついてくるようにねっとりとしていき、衣の油と溶け合っていく。
ラードの風味に包まれて蛋白なイカの甘味にコクが増す。
塩を散らして、レモンを絞るのも良い。
酸味と塩味がイカを引き立てる。
「ぽん多本家」のフライにソースは不用。
足すのはいつも、塩とレモン。
全体が引き締まるのに旨味だけが膨らむ。
強さの中に優しさがあって男性的で女性的。
それがなんとも官能的で、食べる度に恍惚となる。
イカフライがメインになるってはじめての経験。
「はじめて」はいつだって尊く、胸を揺さぶり、心が動く。
この日の「ぽん多本家」でも、心が揺さぶられ、胃袋はうっとりと満たされた。
– 上野広小路 ぽん多本家 ヤサイサラダ・イカフライ –