フォアグラの表皮が鳴らす「プチッ」という静かな破裂音は、幸せの合図だ。 その音が聞こえるや否や、濃密という言葉で片付けるには勿体無い、陶酔となる甘美が鼻を抜け、舌を潤し、身体中の細胞全てに染み込んでいく。 やがてゆっくり …
月: 2024年1月
北島亭の「生ウニのコンソメゼリー寄せ」。 当店に来て食べない人はいないであろうスペシャリテの一つだ。 初めて口にした時は、ウニの質の良さと量に肝を抜かれたが、久しぶりに口にした今、ウニではなくコンソメゼリーとカリフラ …
鰤、実は苦手だった。 味は好きだが、焼くとパサつく身の触りがダメだった。 だが、「青山おとと」の鰤は違った。 写真でも伝わってくるが、身がしっとりと濡れている。 口にしてさらに目を丸くした。 皮目はパリパリに焼かれて …
「うぅ。」 一口食べた瞬間、声が漏れ、すかさずご飯を掻っ込んだ。 青山おととの「銀鱈西京焼」である。 味噌に漬けられ、熟した鱈の身を舌に乗せると、花弁の様に柔らかく繊細に解ける。 澄んでいてそれでいて濃密な脂を抱えた …
供された途端、白い皿から立ち昇るバターの甘い香りに顔が弛緩した。 スプーンでそっとソースと魚介を掬い上げ、口に運ぶ。 バターモンテした黄金のソースには、魚介達のエキスと乳の甘味が境目なく混ざり合った純粋がある。 絹の …
カレーと仔羊。おぉ!天地がひっくり返っても旨い定番じゃないか。 えっ!鰻のジュも入っているんですか? 思わず、聞き返してしまった。 思いがけない未知との遭遇に胸を昂らせながら口に運んでみると、カレースパイスで引き立っ …
ひんやりと冷たいテリーヌを舌に乗せると、フォアグラは淡雪の様に溶けていった。 残るは、芳醇な脂とさつまいもの柔らかな甘味。そしてポルト酒の妖艶な香りだけ。 一切の雑味が無いそれらは、なだらかに続く水平線であり、終わり …