噛まずに、舌にそっと置き、溶かす。 これが、フォアグラの嗜みである。 すうっと舌の上で溶け、ほんのりと甘い香りを放ちながら、跡形もなく消えていく。 脂の塊なのに、微塵もいやらしくない。 ポワレする前に的確な塩が当てら …
気付けば、ずっとコレを食べている。 北島亭といえば「生ウニのコンソメゼリー寄せ」。 だが、私にとっての永遠のスタンダードナンバーは、「タラバガニのクレミューズ ブリニ添え」。 マヨネーズの様なソースで和えたほぐしたカ …
思わずメニューを何度も見返してしまった。 「平目に林檎ソース」である。 聞けば、北島シェフの新作だと言う。 恐る恐る口に運ぶと、顔が瞬時に崩れた。 林檎の淡い甘みが、平目の繊細に見事に寄り添っているではないか。 皮目 …
何故これほど前に美味しいのか。 茸をエシャロット、バター、塩胡椒、パセリで炒めただけなのに。 逞しい面のセップ茸だが、気温や気候の変化に強い影響を受けやすく、実は繊細。 それでいて、松茸やトリュフと同様に人の手による …
「北島亭」のステーキは、噛めば噛むほどに、命の雄叫びが舌を渦巻く。 舌を踏みつけてくる躍動感のある濃い旨味は、牛の生命力そのものである。 食べているのではない。 肉が私の顎を動かしているのだ。 噛む毎に、肉が口の中で …
歯が喜んでいる。 「北島亭」の「オーストラリア産仔羊背肉の香草パン粉焼き」である。 カリッ。 パン粉が音を立てて弾けた瞬間、健やかで伸びのある赤身と甘いコラーゲンが、口に入って、顔を崩れさせる。 噛めば、肉に歯が抱き …