胡麻を纏った皮目を歯で破れば、身が舌の動きに添いながらしなやかに解れていく。 あたかも舌に同化する様に甘え、焦ったい桃色の色気を漂せる。 サクラマスに官能が震え、弄ばれ、意識がすっーと遠のいていく。 残酷かな。たった …
4月の北島亭。 アスパラか、フォアグラか。 無論、アスパラである。 ただ茹でただけなのに、穂先からは春が香り、根本から大地のミネラルが溢れ出す。 コリアンダーを忍ばせたオランデーズソースは濃厚だが、決してアスパラを越 …
ちゅる。 牡蠣が口に滑り込んできた。 その瞬間、波の音に鼓膜が震え、母なる海に舌が抱かれた。 乳の濃密な甘みが滲み出し、ビネガーと混じり合い、旨味を膨らます。 フランボワーズが、牡蠣と爽やかに融合し、心地良い磯風が吹 …
いくら腹が満たされていようと、北島亭のステーキを食べないという選択肢はない。 エシャロットバターの香りに誘われ、噛めば、ランプ肉の濃い滋味がどっと繊維から溢れてくる。 透き通った脂にしつこさは無く、むしろ清々しい。 …
この真鯛のポワレを食べれば、改めてフランス料理が足し算の料理であることが実感できる。 白身魚に敢えて赤ワインを合わせ、ベーコンやソテーした玉ねぎとマッシュルーム、菜花のクリーム煮そしてポーチドエッグを重ねた一皿だ。 …
出てきた瞬間、圧倒的なボリュームに笑いが込み上げた。 温菜「蛤・帆立・芝海老・リードヴォーのクリーム仕立て 軽いパイを添えて」である。 「軽いパイ」は確かに質量的には軽いが、上に一つ下にも一つ在って、視覚的に満腹中枢 …
私的北島亭のスペシャリテである「タラバガニのクレミューズ ブリニ添え」。 マヨネーズ風ソースで和えたタラバガニのほぐし身を、ブリニに乗せて食べる一皿だ。 ブリニとは小麦粉や蕎麦粉、卵、牛乳で作るロシア発祥の甘くな …
北島亭のタルトは不可思議である。 メインの肉を終え、胃袋が悲鳴を上げる寸前でもスルスルと収まってしまう軽さがある。 生地はみっしり詰まり、深くギラめく苺は山盛り。ポーションはパティスリーのそれ以上である。 だが、一口 …
牛が言う。 「さぁ、噛め!」 私はこう返す。 「言われずとも噛んでやる。」 ナイフを入れ口に運べば、牛は歯が入るのを待ち侘びていたかの様に肉汁を吐き出す。 根性のある赤身と柔らかな脂身が砕け、エシャロットの切れ味が鋭 …
カレイの中でとりわけ身が細く、味わいは澄んでいて純白な柳カレイ。 その上品さは糸の様に繊細故に、守りの薄味で供されることが多いが、北島亭は攻めの強味だ。 塩を思い切り当てた後、たっぷりのバターで火を入れる。 皮目は香 …