皿の上の全てに意味がある。 北島亭の「ボタンエビのマリネ フランボワーズ香る青のり添え」である。 純白の肉体に歯を入れると、プリッと弾け、濃く甘いエキスがねっとりと舌に絡みつく。 ボタンエビ特有の、執拗なのにいやらし …
月: 2024年2月
スプーンを押し返す弾力。 卵の純真を抱えたカスタード。 ビターなカラメル。 張り詰めているのに、舌に乗ると甘やかに消えていく。 これだよ、これ。プリンはこうでなくちゃならないんだよ。 「バケツ一杯にくださいっ!」 そ …
人参のムースと同じく五十嵐シェフの長年のスペシャリテである「豚足のポルト酒煮込み」。 足を開いて骨を除き、鳥のムースと茸を詰めたそれは、ポルト酒の甘い典雅を香らせ、「さぁ、食べて」と耳元で囁く。 歯や歯茎に絡みつきな …
蛤は、人間の奥底に眠っている動物的本能を沸き立てる。 海底に宿り栄養を蓄え、はち切れんばかりに太りきった肉体は、「噛む」というプリミティブな動物的行為への熱情に満ちている。 サクッと弾ける痛快な衣を纏ったこの蛤のベニ …
バターの光に反射して艶めく麗しい白アスパラガスを目前にして、春の訪れを実感する。 繊細な命の萌芽の香りが漂い、大地の甘さをたたえた甘やかな汁が滲み出す大樹の如き太い一本。 拙い甘味と微かに差し込める苦味の光は春の陽気 …
ニタリ鯨のカルパッチョである。 紅が麗しい丁寧な下処理が施された一切れを口に運ぶと、途端に舌と一体となった。 生気感じる血潮が飛沫をあげ、威風堂々とした旨味が渦巻き、摩り下ろしたニンニクの香りが鼻をゆっくりと抜けてい …
極限に生に近しくそれでいて生ではない、ミキュイされた魚介達。 鰆には男性的渋みを、太刀魚には花弁の様な繊細を、甘鯛には女性的慈愛を、鰻には身体昂ぶる滋味を、帆立には心溶かす甘味を、海老には張り詰めた肉体を。 皿の上で一堂 …
これは普通の白子ムニエルではない。 ソースにフォンとバターが境目なく抱き合っている。 ぷりっ、とろり、とろとろ。 熱々を口に入れると、いけない甘みがフォンとバターの純真と溶け合い、脳がゆっくり溶けていく。 あぁ、あぁ …