セロリ、胡瓜、人参、カリフラワー、パプリカ、玉葱、ヤングコーン。 野菜一つ一つから、命の雫が滴り、舌の渇きが潤っていく。 清らかなハーブに細胞が洗われ、健やかな旨味が、寄せては返す。 静かな空間で、野菜達の合唱が響き …
月: 2024年4月
マンダリンオリエンタルホテル東京38Fにある「THE PIZZA BAR ON 38TH」。 「50 Top Pizza Asia Pacific 2023」にて1位、「50 Top Pizza World 2023 …
「とっておきのデセールです、トイレは必ず済ましておいて下さい。」 高橋マダムから、そう言われて落ち着かなかった。 「トマトソルベのグラタン」である。 冷たいトマトソルベに熱々のサバイヨンを乗せたこの一皿は、供する時間 …
食べた瞬間、豚になっても良いと思った。 皮のコラーゲンの甘さが目を細めさせ、頬肉が歯を抱き込み、脳味噌が心を溶かし、耳がコリっと弾む。 四角形の中に様々な旨味と食感が潜んでいて、歯や舌に訴えかけてくる。 その渾然一体を、 …
ヒラスズキは微笑んでいた。 品の良い甘味に満ち、隆々な肉体はふっくらと弛緩していた。 ほぐれた肉体に、滋味溢れる蛤のエキスや色灯ともす蛍烏賊、ほくほくとした空豆の穏やかな青味が寄り添い、喜んでいた。 そんなヒラスズキ …
新作にして、スペシャリテとして君臨する風格が既にあった。 鰻の皮目、身、煮詰めたフォンを固めたジュレを重ねた冷静テリーヌである。 プチッと弾ける皮目のゼラチン、しっとりとした白身、純度100のジュレ、三つの層を舌に乗 …
「鶏は人気が無いです。」 高橋マダムがそう言った。 気持ちは分からなくもない。 鶏は庶民的で身近な肉だ。 故に、折角なら家庭では簡単に味わえない牛や羊を食べたい気持ちは分かる。 だが、このプーレジョーヌを食べてみてほ …
甘鯛が笑っていた。 香ばしい皮目を破れば、淑やかな身がほろほろと崩れ、緩い甘みが顔を出す。 クリームソースは優しく寄り添い、甘鯛を温める。 トリュフを纏ったミルフィーユ状のキャベツは、トリュフが精妙で出しゃばっていな …
「ありがとう」 自然と声が漏れた。 「春野菜のリゾット」である。 ゆっくりと流れる米の甘みに、蛍烏賊がねっとりと絡み、野菜がサクサクとリズムを鳴らす。 米の慈愛に心が和み、蛍烏賊の呼吸に胸が焦らされ、春野菜の声に身体が洗 …
「ウフブルイユ」 音感がそうさせるのか、口にしただけでなんだか気持ちが良い料理である。 口に近づければ、バターの甘い香りが鼻をくすぐって、「あぁ」と言葉を漏らす。 食べれば、鳥のフォンやバターのコクと空気を孕んだスク …