月: 2024年4月

豚人間

食べた瞬間、豚になっても良いと思った。 皮のコラーゲンの甘さが目を細めさせ、頬肉が歯を抱き込み、脳味噌が心を溶かし、耳がコリっと弾む。 四角形の中に様々な旨味と食感が潜んでいて、歯や舌に訴えかけてくる。 その渾然一体を、 …

ヒラスズキは

  ヒラスズキは微笑んでいた。 品の良い甘味に満ち、隆々な肉体はふっくらと弛緩していた。 ほぐれた肉体に、滋味溢れる蛤のエキスや色灯ともす蛍烏賊、ほくほくとした空豆の穏やかな青味が寄り添い、喜んでいた。 そんなヒラスズキ …

春のリゾット

「ありがとう」 自然と声が漏れた。 「春野菜のリゾット」である。 ゆっくりと流れる米の甘みに、蛍烏賊がねっとりと絡み、野菜がサクサクとリズムを鳴らす。 米の慈愛に心が和み、蛍烏賊の呼吸に胸が焦らされ、春野菜の声に身体が洗 …

気持ち良い

  「ウフブルイユ」 音感がそうさせるのか、口にしただけでなんだか気持ちが良い料理である。 口に近づければ、バターの甘い香りが鼻をくすぐって、「あぁ」と言葉を漏らす。 食べれば、鳥のフォンやバターのコクと空気を孕んだスク …