生後1ヶ月の仔牛に色艶を感じてしまった。 口に近づければ、柔らかな身質から滲み出る乳の甘やかな香りに、ローズマリーがふわっと乗ってくる。 甘やかなバターやモリーユの滋養、じゃがいもの丸みの全てが、仔牛をそっと抱く。 …
ドーバー海峡の舌平目は、バターに寄りかからない。 こってりとした乳脂に溺れず、自身の旨味を主張する。 その身は、花弁の様な繊細さとは対極。 ぷりぷりと音が立つかのように歯が食い込んでいく。 すると、海峡の荒波に負けな …
フォアグラと豚足。 口にしただけで悪い取り合わせである。 サクサクの後にやってくる、豚足とフォアグラのトロトロ。 ゼラチンと脂が絡み合い、歯や歯茎にまとわりつきながら、迫力ある旨味が口内を包みこんでいく。 あぁ身体に …
フランス料理のデセールは重たければ重たいほど良い。 メインの余韻を吹き飛ばす濃厚な甘味が無ければ、食事が締まらない。 至急エスプレッソを欲したくなるほどに濃密なチョコレートと芳香漂うバニラアイスは、これぞ!と声高らか …
これが猪か。 儚く消えていく脂と勇猛な肉質の対比は、牛や豚、鳥には無い猪の独特。 どこまでもピュアで淀みなく、それでいて猛々しい。 脂がぐんと乗って舌に迫るが、筋肉を感じさせる身の張り方があって命が迫ってくる。 噛む …
何度食べても、顔が緩んでしまう。 Artichautのスペシャリテ「フォアグラとモリーユ茸のフラン」である。 口腔内のどこにも引っかからず広がり、脂と卵が境目なく混ざり合ったフラン。 歯を入れると密度高い森の滋養を吐 …
ホワイトアスパラガスを食べる時は一口が小さくなる。 ナイフを入れる度に甘やかな汁が溢れ出し、皿全体の甘味の濃度が増すからだ。 命の萌香を漂わせる瑞々しいアスパラの穂先は甘く、根元はほろ苦い。 卵黄の甘味は穂先に寄り添 …
キャベツというのは、包容力の塊である。 挽肉を包み込んだロールキャベツを始め、この「縮緬キャベツとフォアグラのテリーヌ」もまた、キャベツの懐の深さに感心させられた。 濃密で妖美なフォアグラを挟み込んだ縮緬キャベツの薄 …
チドリは、小さい巨人である。 小ぶりな躯体ながら、筋肉質で逞しい。 噛めば、歯を押し返す様な弾力があり、断ち切った繊維から、凛々しい鉄分や詰まった滋養がしたたり落ちる。 沸るような血の味と燃え盛る筋肉の味は、野生の猛 …