これを目前にして、気分が高まらない奴などおるか。 照り照りの紅が眩しい山盛りの苺が乗ったタルトとそれに匹敵するサイズのバニラアイス。 「あれ今日って私の誕生日だっけ?」と勘違いしてしまう程の華やかなデセールである。 …
何度も何度も食べている「黒毛和牛ランプ肉のステーキ」だが、これは味わったことのない未知だった。 身質が魚の様に繊細で柔らかく、肉汁は溢れ出るのではなく躍動し、口腔の中を這うように巡るのだ。 「こんなの知らない」 いつ …
白身魚は綺麗すぎる。 赤身魚と違って淡白でクセが全くない。 だからどこにも引っかからないし、琴線にも触れてこない。 だが、ムニエルにされると途端に色艶が増す。 油脂によって照ったカレイを口に運ぶと、バターの甘い香りが …
フォアグラの表皮が鳴らす「プチッ」という静かな破裂音は、幸せの合図だ。 その音が聞こえるや否や、濃密という言葉で片付けるには勿体無い、陶酔となる甘美が鼻を抜け、舌を潤し、身体中の細胞全てに染み込んでいく。 やがてゆっくり …
北島亭の「生ウニのコンソメゼリー寄せ」。 当店に来て食べない人はいないであろうスペシャリテの一つだ。 初めて口にした時は、ウニの質の良さと量に肝を抜かれたが、久しぶりに口にした今、ウニではなくコンソメゼリーとカリフラ …
供された途端、白い皿から立ち昇るバターの甘い香りに顔が弛緩した。 スプーンでそっとソースと魚介を掬い上げ、口に運ぶ。 バターモンテした黄金のソースには、魚介達のエキスと乳の甘味が境目なく混ざり合った純粋がある。 絹の …
カレーと仔羊。おぉ!天地がひっくり返っても旨い定番じゃないか。 えっ!鰻のジュも入っているんですか? 思わず、聞き返してしまった。 思いがけない未知との遭遇に胸を昂らせながら口に運んでみると、カレースパイスで引き立っ …
ひんやりと冷たいテリーヌを舌に乗せると、フォアグラは淡雪の様に溶けていった。 残るは、芳醇な脂とさつまいもの柔らかな甘味。そしてポルト酒の妖艶な香りだけ。 一切の雑味が無いそれらは、なだらかに続く水平線であり、終わり …
ミニャルディーズまで楽しみが続くと嬉しくなる。 北島亭のミニャルディーズは、日本一。 焼き菓子のみと偏っているが、焼き菓子好きにとっては無問題。むしろこの上なく喜ばしい展開である。 とりわけ好きなのが、写真奥のサブレ …
ほとんどのプリンがとろける時代。 今、恋しくなるのは、ちょいと硬めで凛と立ち、強めに焦がしたカラメルを讃えた昔ながらのプリン。 しっかりとした弾力からの滑らかな口溶けと、卵と牛乳の素直な甘味とコク。 幼い頃から人々を …