Tag Archives: マノアールダスティン

春のリゾット

「ありがとう」 自然と声が漏れた。 「春野菜のリゾット」である。 ゆっくりと流れる米の甘みに、蛍烏賊がねっとりと絡み、野菜がサクサクとリズムを鳴らす。 米の慈愛に心が和み、蛍烏賊の呼吸に胸が焦らされ、春野菜の声に身体が洗 …

気持ち良い

  「ウフブルイユ」 音感がそうさせるのか、口にしただけでなんだか気持ちが良い料理である。 口に近づければ、バターの甘い香りが鼻をくすぐって、「あぁ」と言葉を漏らす。 食べれば、鳥のフォンやバターのコクと空気を孕んだスク …

対比

  ギリギリまで焼きこまれた香ばしい軽やかなフィユタージュ。 歯茎や舌に絡みついて取れない濃厚で重厚なカスタード。 この対比がミルフィーユである。 前者は香ばしく軽ければ軽いほど望ましく、後者は濃く重ければ重いほど望まし …

流される

五十嵐シェフの魚料理が大好きだ。 的確な施しによって、食材の素質が目覚めているからだ。 平目は、ふっくらと優しいが、ぐっと舌に迫ってくる味わいに勢いがある。 帆立は、歯切れがよく、繊維から溢れる甘味に密度があって濃い。 …