和食

鰯を味わい尽くす。

  さっぱりとした甘味のある煮汁で炊かれ、ふっくらとした鰯。 脂ノリの良いカミは優しく舌を包み込み、すっきりとした脂を残して消えていく。 締まりが良いシモには筋肉が感じられ、独特な癖になる苦味が味わい深く、上品ながら後を …

魚屋の矜恃。

  魚屋が営む吉祥寺の定食屋「里の宿」。鮮度抜群の魚を一汁三菜で昼夜提供している。   銀たらは花びらが舞い散るが如く、儚くおぼろげに口の中でひらりひらりとほどけていく。香ばしい味噌の熟した塩味によって膨らんだ銀たらの甘 …

朝から食える天丼。

  眩しい狐色のかき揚げの中には芝海老と帆立がごろごろ詰まっている。タレはさらっと控えに、衣のさくっとした食感が楽しめる。 衣を破ると芝海老はプリッと弾け、ぷっくりとした帆立は噛むほどに磯の香りと甘味がほどける様に広がっ …

感謝を込めて。

  創業1968年高級ブティックが立ち並ぶ銀座で古き昭和の匂いが濃く残るエアポケットの様な処。平日の昼間はサラリーマンの飯処、休日は昼間から魚をつまみに酒呑み達で賑わいを見せている。 なびく青ののれんをくぐると「お食事で …

大衆食堂#1 動坂食堂

  これと言って食べたいものが分からない。胃袋が迷子になることが時々ある。そういう時に足を運ぶのが大衆食堂。和洋中なんでもござれ、壁一面に貼り出された大量のお品書き。定食のセットを選ぶも良し、メインのおかずをまず決めて副 …

丼の上の社会情勢

  親子丼は子を味わう料理だ。ふわっと膨らんだ甘い黄身とトロンとした官能的な白身。溶ききらないことで生まれる子の自由奔放さ。一方、親は充分な噛みごたえで親としての威厳を少量でありながら示し、絶対的な安心感を与えてくれる。 …

歴史あるタレご飯。

海老2本、穴子、キス、人参、ししとう。天ぷらの人気者たちが出揃った文句なしの顔ぶれが嬉しいが、天ぷら中山の天丼の主役はなんといっても彼らを染め上げる黒いタレだ。 こっくりとしていて重そうだが、後味はすっきりとしていて香り …