フランス料理

尊い一皿

一口食べて、仰け反ってしまった。 「フォアグラと鰻のパテ」である。 フォアグラが溶ける。 広がる脂は川となって、鰻がその中を泰然と昇っていく。 濃密な脂と、滋味や青い香りが出会い、まぐわい、響き合う。 そこへポルト酒が甘 …

官能。

  琥珀色のゼリーの上に、ふっくらとした牡蠣が浮かんでいる。その姿を見ただけで、喉が鳴った。口に含むと、牡蠣の白濁としたエキスが、コンソメ、白人参とまぐわう。息が漏れるほどに艶めかしい旨味が舌を舐め、濃密な余韻を残して、 …

夏の季語。

  夏の暑さが酷くなるほど美味しくなるものといえば、コートドールの「梅干・シソのクリームスープ」である。一口掬うと、夏の雷のような酸味に撃たれ、その清涼感に身体中の細胞が洗われていく様な感覚になる。絶妙なとろみも堪らない …

鱚は。

  鱚という魚は、素直で飾り気のない「生直(きす)」が語源だというが、ラクレリエールの「キスのクレープ」は夜を妖しくする色気に満ちている。 じゃがいものドレスをはらりと捲ると、鱚は麗しい白肌を晒す。 トリュフとバニラの妖 …

夏の仔羊。

  夏の仔羊は、たくましくも切ない。 鮮血を滲ませる肉は、シルクの様に滑らかなタッチで舌に乗せるとひたっと吸い付いてくる。 その舌あたりは熱い接吻を思わせるほどに甘美で、蠱惑的で、官能的。 どきどきしながら歯を入れれば、 …