バターの光に反射して艶めく麗しい白アスパラガスを目前にして、春の訪れを実感する。 繊細な命の萌芽の香りが漂い、大地の甘さをたたえた甘やかな汁が滲み出す大樹の如き太い一本。 拙い甘味と微かに差し込める苦味の光は春の陽気 …
ニタリ鯨のカルパッチョである。 紅が麗しい丁寧な下処理が施された一切れを口に運ぶと、途端に舌と一体となった。 生気感じる血潮が飛沫をあげ、威風堂々とした旨味が渦巻き、摩り下ろしたニンニクの香りが鼻をゆっくりと抜けてい …
極限に生に近しくそれでいて生ではない、ミキュイされた魚介達。 鰆には男性的渋みを、太刀魚には花弁の様な繊細を、甘鯛には女性的慈愛を、鰻には身体昂ぶる滋味を、帆立には心溶かす甘味を、海老には張り詰めた肉体を。 皿の上で一堂 …
これは普通の白子ムニエルではない。 ソースにフォンとバターが境目なく抱き合っている。 ぷりっ、とろり、とろとろ。 熱々を口に入れると、いけない甘みがフォンとバターの純真と溶け合い、脳がゆっくり溶けていく。 あぁ、あぁ …
供された途端、白い皿から立ち昇るバターの甘い香りに顔が弛緩した。 スプーンでそっとソースと魚介を掬い上げ、口に運ぶ。 バターモンテした黄金のソースには、魚介達のエキスと乳の甘味が境目なく混ざり合った純粋がある。 絹の …
カレーと仔羊。おぉ!天地がひっくり返っても旨い定番じゃないか。 えっ!鰻のジュも入っているんですか? 思わず、聞き返してしまった。 思いがけない未知との遭遇に胸を昂らせながら口に運んでみると、カレースパイスで引き立っ …
ひんやりと冷たいテリーヌを舌に乗せると、フォアグラは淡雪の様に溶けていった。 残るは、芳醇な脂とさつまいもの柔らかな甘味。そしてポルト酒の妖艶な香りだけ。 一切の雑味が無いそれらは、なだらかに続く水平線であり、終わり …
この世で最も溺愛する液体の「海老のビスク」。 この世で最も溺愛するルセットの「パイ包み焼き」。 そう、この一皿には私の好物が全て詰まっている。 ナイフを入れると、パイから美味しい産声が聞こえ、鮑と海老が顔を出した。 …