「北島亭」のステーキは、噛めば噛むほどに、命の雄叫びが舌を渦巻く。 舌を踏みつけてくる躍動感のある濃い旨味は、牛の生命力そのものである。 食べているのではない。 肉が私の顎を動かしているのだ。 噛む毎に、肉が口の中で …
艶めく目玉焼が、息を呑むほどに美しい。 とろっと半熟の黄身が流れ出る様は、幾つになっても心躍るものがある。 国産牛と国産豚のハンバーグは、舌に優しく、ふわりと崩れる。 噛むと、合挽ならではの凛々しい牛の香りと豚の甘み …
皆既日食を閉じ込めたような輝きを放つソースに、逆さ富士のように映り込むパイの気品ある姿は、もはやフランス料理百景である。ナイフを入れると、たちまちバターが鼻を包み込み、口に入れれば、フィレが歯を柔らかく包み込む。舌を …
カボチャ、クリーム、ウニがグラスの中で凛として煌めいている。スプーンで掬うと、ジュレに包まれたズワイガニが顔を出す。カボチャの純な甘み、コンソメジュレ、ズワイガニ、ウニ。すべてが調和して、口の中で均整美を描く「カボチ …
とんかつ成蔵 | 南阿佐ヶ谷とんかつを待っている間、驚いた。揚げの音、香りが全くしないからだ。低音から時間をかけて揚げられた豚は、余分な水分が抜け、旨味の詰まった汁だけを身に閉じ込める。中粗の生パン粉の衣は、軽 …
どうしたってご飯がすすむ。林SPFの豚バラは、口に入れると、甘い脂が濃く香る。脂身はぷるぷると震えるが、赤身にはハリが残っていて、噛む喜びがある。染みたソースが肉塊から溢れ、口に広がる旨味とまぐわい、ご飯を猛烈に誘っ …
特選ロースかつ定食¥2,900お気に召し度:★★★★★(★×5) とんかつ激戦区高田馬場にて、2017年にオープン後、めきめきと頭角を表し、今では「とん太」と並ぶ名店「ひなた」。豚肉は、柔らかい肉質と甘い脂の「漢方三元豚 …
一口運ぶと、ミソの旨味が押し寄せてきた。 いや、ミソだけではない。 ジロールの森の豊穣やバターの甘みも、ミソの奥からじわりじわりと顔を出し、米に染み込み、舌の上でゆっくりと味を開かせる。 噛むほどに、潰れていくほどに …
これはいけない。 薫香を漂わせる甘いバターと滋養溢れるサマートリュフが、共鳴し、官能をくすぐってくる。 鼻にいすわる豊かな余韻に、骨抜きにされた。 そこへ真鯵が、ねっとりと舌や歯茎に脂を滴らし、香りとまぐわう。 あぁ …
幼い頃から、私は食い意地を張った子供だった。毎朝欠かさずに給食の献立表をチェックし、「カレーライス」という文字には、一際心を躍らせていたのを覚えている。 お昼のカレーだけをモチベーションに、午前の授業を乗り切り、腹ペ …