ダニエル・カルバートは、食材を尊び、既存とは違ったやり方で光を当てる。 例えば、「有明山農場美膳軍鷄のポシェ ヴァンジョーヌ」は、香港の土着的料理の「酔っ払い鳥」から着想を得る。 ボーダーレスな感性が、屈託なく表現さ …
舌の上で、平目は蕩けて消えてしまった。 ふんわりと膨らんだ平目が舌に乗る。 花弁のように開いた身質から、ほの甘いエキスが流れ、滑らかなボンファムソースと混ざり合う。 バターと生クリームの乳脂のコク、スープドポワソンが …
美味しいソースは残してはいけない。 パンを片手に、お皿の隅から隅まで綺麗に拭わなければならない。 「最近、ソースを残されるお客様が多いんです。」 軽快洒落なマダムが、珍しく悲しそうな顔をして呟く。 フランス料理の真髄 …
もちっと歯が餅に包まれば、「パリン。」と薄皮が軽快な音を立てて、弾けていく。 すかさず甘い脂が舌に広がり、味噌の甘みや野菜の香りが引き立てる。 うっとりと宙を仰ぎ、頬が緩む。 あぁ、死ぬまでに北京ダックだけで満腹にな …
凄い店である。 プリフィックス形式で、前菜、肉料理、デザートを約30品目から選べる。加えて、テーブル単位で揃える必要もない。 アミューズにお茶菓子まで付いて、食事だけなら7,500円。 ここを嫌う人は、人じゃない。 …
歯が喜んでいる。 「北島亭」の「オーストラリア産仔羊背肉の香草パン粉焼き」である。 カリッ。 パン粉が音を立てて弾けた瞬間、健やかで伸びのある赤身と甘いコラーゲンが、口に入って、顔を崩れさせる。 噛めば、肉に歯が抱き …
日本人であるなら、日本の食材の素晴らしさは、重々知っている。 しかし、「エスキス」の料理を食べて、自分の浅はかさを痛感した。 茄子である。 滋養を抱えた夏の茄子は、噛めば、花開く夏の情熱に身体が鼓舞される。 だが、「 …
私にとって、フランスはジュラといえば、眼鏡であった。「Ma Poule」に来るまでは。 当店の看板メニュー「伊達鷄のヴァンジョーヌソース」である。 ヴァンジョーヌとは、ジュラ地方の名産ワイン。芳醇で香り高く、キリッし …
勿論豆腐である。 だが、「4000 Chinese Restaurant」の麻婆豆腐は、牛が主役である。 口に運ぶとまず、牛の高貴な香りが鼻を抜けて、旨味が広がり、その後から醬や麻婆の刺激が追いかけてくる。 花椒や豆 …
夏も悪くないかもしれない。 「ラブランシュ」のガスパチョを一口食べて、そう思った。 あさりの出汁と野菜のエキスのスープの上に浮かぶ夏の野菜たちは、彩が豊かで生命力に溢れている。 歯を入れると砕けて、香りと味が花開き、 …