ロースト以上に、煮込みには料理人の技術が問われる。 巷に溢れる”1日煮込みました!”ないし”48時間煮込みました!”といった謳い文句の様に、ただ時間をかけて煮込めば良い …
極限に生に近しくそれでいて生ではない、ミキュイされた魚介達。 鰆には男性的渋みを、太刀魚には花弁の様な繊細を、甘鯛には女性的慈愛を、鰻には身体昂ぶる滋味を、帆立には心溶かす甘味を、海老には張り詰めた肉体を。 皿の上で一堂 …
これは普通の白子ムニエルではない。 ソースにフォンとバターが境目なく抱き合っている。 ぷりっ、とろり、とろとろ。 熱々を口に入れると、いけない甘みがフォンとバターの純真と溶け合い、脳がゆっくり溶けていく。 あぁ、あぁ …
これを目前にして、気分が高まらない奴などおるか。 照り照りの紅が眩しい山盛りの苺が乗ったタルトとそれに匹敵するサイズのバニラアイス。 「あれ今日って私の誕生日だっけ?」と勘違いしてしまう程の華やかなデセールである。 …
何度も何度も食べている「黒毛和牛ランプ肉のステーキ」だが、これは味わったことのない未知だった。 身質が魚の様に繊細で柔らかく、肉汁は溢れ出るのではなく躍動し、口腔の中を這うように巡るのだ。 「こんなの知らない」 いつ …
白身魚は綺麗すぎる。 赤身魚と違って淡白でクセが全くない。 だからどこにも引っかからないし、琴線にも触れてこない。 だが、ムニエルにされると途端に色艶が増す。 油脂によって照ったカレイを口に運ぶと、バターの甘い香りが …
フォアグラの表皮が鳴らす「プチッ」という静かな破裂音は、幸せの合図だ。 その音が聞こえるや否や、濃密という言葉で片付けるには勿体無い、陶酔となる甘美が鼻を抜け、舌を潤し、身体中の細胞全てに染み込んでいく。 やがてゆっくり …
北島亭の「生ウニのコンソメゼリー寄せ」。 当店に来て食べない人はいないであろうスペシャリテの一つだ。 初めて口にした時は、ウニの質の良さと量に肝を抜かれたが、久しぶりに口にした今、ウニではなくコンソメゼリーとカリフラ …
鰤、実は苦手だった。 味は好きだが、焼くとパサつく身の触りがダメだった。 だが、「青山おとと」の鰤は違った。 写真でも伝わってくるが、身がしっとりと濡れている。 口にしてさらに目を丸くした。 皮目はパリパリに焼かれて …
「うぅ。」 一口食べた瞬間、声が漏れ、すかさずご飯を掻っ込んだ。 青山おととの「銀鱈西京焼」である。 味噌に漬けられ、熟した鱈の身を舌に乗せると、花弁の様に柔らかく繊細に解ける。 澄んでいてそれでいて濃密な脂を抱えた …