甘味の熱情

  供された途端、白い皿から立ち昇るバターの甘い香りに顔が弛緩した。 スプーンでそっとソースと魚介を掬い上げ、口に運ぶ。 バターモンテした黄金のソースには、魚介達のエキスと乳の甘味が境目なく混ざり合った純粋がある。 絹の …

感謝と畏怖

  どこまでもきめ細やかで、しなやかな肉に歯が迎えられた時、瞼の裏に広大な蝦夷を駆ける鹿の姿を見た。 そこには誰にも束縛されず、自由に命を育んできた野生だけが持つ純潔がある一方で、人間によって引き出された勇猛がある。 生 …

結局コレ

  気付けば、ずっとコレを食べている。 北島亭といえば「生ウニのコンソメゼリー寄せ」。 だが、私にとっての永遠のスタンダードナンバーは、「タラバガニのクレミューズ ブリニ添え」。 マヨネーズの様なソースで和えたほぐしたカ …

蛤の色気

ネギに身を潜めた蛤と目があった時、頬を赤らめた。 白濁とした汁を滴らせた姿、陽の光を初めて浴びたかの様な透き通った肌に、色気を感じたからだ。 穢れなど一切見られないその純粋無垢を前に、鼻息を荒くした自分を恥じらいつつ、ゆ …